アマガエルの大合笑

更新速度:ポルシェよりはるかに遅い ぴろよによるお笑いブログ ライブ多め

翔ミラクルバラエティー 2018-04-30-059

ああ大阪

公私ともに何度目の来阪か。150回はくだらないと思う。「私」は「私」で100%楽しむが「公」の場合「私」の割合が変わることはあっても0になることはない。今回は公私5:5くらいの割合でちょうどよし。
今回大阪で改めて思ったこと
■お笑い劇場周辺泊の便利さ
⇒なんばというか千日前というか漫才劇場の周辺に宿泊するのは初。ミナミエリアにはよく宿泊していたが思い切ってよしもと漫才劇場(及びなんばグランド花月)から徒歩2分のところに泊まったら便利便利。梅田で打ち合わせがあろうが北浜や福島で美味しいものを食べたかろうが、結局お笑いをほぼ必ず見る私にとってライブ前後にちょっと荷物を置きに行けたりする「劇場周辺泊」。「私」の割合が4割を超える際必須で選ぼう。
■カヌレがユニーク

⇒大阪・神戸特有のこういうトッピング。トッピングという発想が他地域にない。最近好きなのはダニエル・カヌレ堂。ここのは、忘れた。デパートで期間限定で売っていたが谷六の店らしい。
■路面店があった

■コウテイのわかりにくさ
⇒このライブの最大の目的はなかなか東京でお目にかかれないコウテイ。その他では「すごく面白い」がもうひとひねりあれば「すごいネタ」を披露したヒガシ逢ウサカ、たっぷりと間を取り数多くないボケでしっかり笑わせたさや香が印象に残ったが、今回のブログはほぼコウテイのことだけ。


「わかりやすくあれ」ハラスメント

コウテイというコンビ。M-1グランプリ2016・2017の3回戦・準々決勝動画で存在を確認*1。ベタな設定にファンタジーな視点を絡ませた「決して王道ではない」漫才という印象。大阪のよしもと若手にこういうコンビがたまにいるのを見かけると言ったところ。生で観たのは今年2018年が初めてだ。
その後、大阪若手のバトルライブで優勝もしているくらいの実力・人気を兼ね備えていること、漫才で知ったがコントにも力を入れていること、2度解散・再結成を繰り返しているらしいこと、不仲であること等の情報は入ってきた。私はまだ生で彼らの漫才を観たことがない。

コウテイの漫才は「少し変わっている」と評されることも多いだろう。ファンタジーな視点もさることながら、なぜそこで?ツッコみたくなるタイミングで奇妙な表情を見せたり奇声を発したりする。逆にコントは九条(背が高い方・ネタを作っている方)の発想力と下田(九条じゃない方)の表現力に頼っているところはあれどそこまで奇抜さは感じないといった印象。私はこれからにとても期待しているが上に余計なことまで考えてしまう。その余計なこととは「わかりにくい」という声の邪魔くささと弊害だ。

個人の好みを度外視すると、より単純で共感を得やすい設定によって人はその笑いを支持しやすくなる傾向がある。単純すぎる設定だと笑い自体が起こらないがとにかく「ありえない!」という感覚より「あるある・・・あるかも!」という笑いの方が大人数の支持を得やすい。
例えばドライブの設定。乗っていた車が急にタイムマシーンになったりいきなりボディーが延びて変な形のリムジンになるよりも、楽しいはずのドライブで彼氏が彼女の運転にイチイチケチをつけていたり海に向かう車中で既に水着に着替え浮き輪を身に付けているという方が人の頭にすんなり入ってきやすいということだ。私は大人数に支持されやすい笑いが優れていると言っているわけではない。「ズレ」ていてもそこに「共感」があると人をネタに引き込みやすい、というだけの話だ。「ありえない!」と「あるある・・・あるかも!」のどちらの笑いが優れているという比較は絶対に出来ない。お笑いという芸能において「面白い」は絶対的に正義であると思うがそれは決して「多くの人に支持されている」とイコールになるわけではないからだ。
ただ昨今こういう「わかりにくい」笑いに出会った時に「わからない」と切り捨てるのならまだしも自分が理解出来ない嫌悪感からか「もっとわかりやすくしろ!」などと狂ったことを言う輩は後を絶たない。売れる≒より多くの人数に受け入れられる≒わかりやすいという式が頭に浮かぶのはわかるが、さて果たして売れるためにわかりやすくするというのは正解なのだろうか。
「売れる」が本分になった時、「わかりやすさ」は非常に正解に近い手法なのかもしれない。しかしその「売れる」の定義が金/人からの注目*2という軸と短期的/長期的という軸の掛け算なので単純なことは言えない。加えて芸人としての方向性の主軸を「自分達が面白いと思ったことをより多くの人数に届けたい」に置いた時、本当に「わかりやすさ」に傾倒していいものかどうか本来ならば大いに迷っていいところなのだ。 迷うという言葉を使ったのは「売れない」のきつさにある。いくら自分達を面白いと信じ、ごく一部の身内や熱狂的なファンに認められたところで生活のための金は入ってこない。舞台に立って何かを披露するときに一切の賛同や賞賛なしに舞台に立ち続けられる、クリエイトのみに喜びを感じられる芸人の数もそう多くはないだろう。
さらに、デビューしたての頃は「わかりにくい」の烙印を押されがちであったが大きく芸風を変えることをせずに見事「売れた」千鳥・野性爆弾等々の現在の活躍に勇気をもらっていただきたいというのもある。
もう一度繰り返すが「この笑いを理解出来ない」と心の内でそっと思うに留まらず「もっとわかりやすくしろ!」と声高に叫ぶ方々はこれらの事情をよく加味しているのだろうか。していての主張であるならもう話すことはないが、うん、加味していなら少し黙っていると良いと思う。「わかりにくい」と感じるのは勝手だが「わかりやすくあれ!」と強要するのは嫌がらせである。昨今の時流にのれば「わかりやすくあれ!ハラスメント」(わかハラ)である。ちなみにハラスメントは嫌がらせなどという生ぬるい表現では事足りないくらいの苦痛・トラウマを相手に与える行為だということも合わせてお伝えしておきたい。ここまで言っておいて非常に難しいのだがこれ、芸人に気を使って言葉を慎めと言ってはいない。「わかりにくいからダメ」の烙印を簡単に押してほしくないのである。もう少し尊重すべき個性と修正すべき要素の再考が必要なのではという話である。


コウテイはこの「わかハラ」を受ける可能性が多少はあると見ている。先人たちと比較して突拍子もないまでは言わないがやはり挙動や視点から一風変わった、ちょっとわかりにくい・・・と言われてしまいそうなことは容易に想像つく。コウテイもまた、今すぐ売れることと自分達の芸風を貫くことで多少なのか大分なのかわからないがジレンマを抱えることであろう。私が割と「わかハラ」を受けていそうな芸人をコウテイ以外にも応援していることもあってここまでの筆圧の高さになってしまった。失礼。

コウテイのわかりにくさオマケ

コウテイについて思っていることをもう少し。私は瞬間的にピンポイントで特定の芸人に着目することはあっても、基本は幅広く色々な芸人を見たいと思っている。さらにお笑いに関する情報源チェックの優先順位は ライブ>twitter>ラジオ>テレビ>動画>画像。テレビ以下動画と画像に至ってはよほど話題のものがない限りチェックをすることがない。自身のこの性質により見落としていたものがある。九条の外見の美しさである。細身で長身。画像を添付することなく言葉だけで伝えようと思うが、誤解を恐れずに言うと岡田将生に近い顔面と見ている。平成後期のモデルや俳優に多い顔という表現がしっくり来る気がする。大体「平成後期のモデルや俳優に多い顔」というやつ自体、好き嫌いを産みだしやすい上、彼はその髪型・衣裳・挙動等々セルフプロデュース出来る全ての要素により外見の美しさをよりわかりにくくしている。わざとメイクダウンしているのかどうかは定かではないが芸人における外見の美醜は色々な物議を醸し出しそうであることは私ですら重々承知しているのでなんらかの考えはあるのであろう。私は人前に立つ人が美しいことに引け目を感じることはないし、醜い外見を笑いに変えられるパワーが大好きだという持論。まあいずれにせよ九条が自分の美しさを活かそうと思う前に笑いの才能を活かそうと思ったことには素直に感謝して良いような気がする。

なるほど、コウテイわかりにくい。
そして、コウテイは本当に面白い。
そのわかりにくさとどう対峙していくのか、彼らに完全に託すがまあコウテイは売れる。いつの日かわからないが、また不仲で解散しない限り売れる。面白い芸人は必ず売れるのだ。


*1:2015年も3回戦まで進出しているらしい

*2:たまたま翌日に行われたライブでもこの話になった

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モンスターエンジン西森単独公演「日記朗読ライブ 毎月開催」2018-04-29-058

西森が毎日書いている日記を朗読するライブ

大声で笑うライブランキングを付けたら私の中で確実にベスト3に入るライブ。日記の朗読だけでも十分面白いのだが読み終わりに一言加えられるエピソードトークも格別。 実際に起こったことの誇張やネタのない日は創作や大喜利等。第一回、東京公演、10周年記念公演あたりには顔を出せているが出来ることなら毎月行きたい。少し顔を出さない間に最後じゃんけんで勝った人がもらえるプレゼントが日記の一部になっていたこと、あることの文句を言いまくる悪い日という一日が追加されたこと等慣れないお約束も増えていたが置いて行かれ感も全くなく初見にも非常に優しいライブ。
興味を持った方はこちらから
www.youtube.com
本当に小銭程度しか入ってこないyoutubeの広告収入を気にしていたのでチャンネル登録をして再生するといいと思う。私は登録しこそすれ再生を怠っているので懺悔のつもりで拡散。
次回は5月25日だそう。私は確実に行けないのだがお近くの方は是非。
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ナイスフライヤー

今回は2018年1月分の朗読

毎回1か月分の日記を読むのが基本形式*1
一番気になったのは自慢の愛車ハチロクの話が出てこないこと。移動が全て自転車になっている。私はライブにはそこそこマメに通うが動画やアーカイブチェックに抜け漏れがありまくる。しかも好んでいたりチェック対象だったりする芸人も多岐にわたる。西森チェックがおろそかになっていたことをここに明記して反省したい。そんな甘いチェック体制なので想像がふくらむ。一軒家に住むのに廃車にしたのか1月はたまたまか。SNS時代、本人にレスを送って確認することも出来なくはないがこれを期に種々の動画やアーカイブをチェックしようと思う。ただたまたまこれを目にした最近のモンスターエンジンに詳しい人がこっそり教えてくれる分には非常にありがたいんですぜ。
冒頭で漫才ライブでのネタは2日前に下ろしたばかりの新ネタだと聞く。かけては修正しかけては修正しの連続で3回目には頭がパンクしていたそうな
ライブ当日の夕方ギャロップ林に「この後何してるの?」と聞かれて日記ライブと話す。いつもめちゃくちゃに林のことを日記に書いているので来場すると言い出したらどうしようと慌てていたそうな。書籍化の際、林の悪口部分をどうするか悩んでいるとも。
今月の日記によく出てきた後輩は四条から改名した学天即つくね、ギャロップ林やテンダラー浜本の出現率は相変わらず。今月のピンチはNEM被害にあったトキ。実は西森も10万ほど所持していたらしいがトキほどではなかったので黙っていたとか。本人達の自覚があってかなくてか、ボケたり鋭い返しをしたりする娘と息子に驚くパパっぷりもなかなか面白い。その他以下。

R34GT-Rに乗る寛平師匠

西森のハチロクも気になる ちなみに私はHCR32に乗っていたことがある

つくねという名前

馬鹿にされがちだが蛆虫だったらもっと大変という

息子の名はあっくん

一人では生きていけない弱いからというやり取りでパパ(西森)はフリーザのように笑ってしまったとか

豪華メンバー6人でのパチンコ

モンスターエンジン・アキナ・プリマ旦那河本(確かこっち、野村ではなかった気がする)・ギャロップ林の6人でパチンコ。年に1か月ほど病のようにパチンコを打ちたくなるらしい

なんばのおでん&うどん屋で絡まれた話

お返しにその時の会話をリアルタイムで日記に記録していたとか 今回のプレゼントはこの日の日記

(確か)1月26日(多分)

トキピー――ンチ 2016年1月6日ベッキーピーーンチ以来時折現れるピンチシリーズ

ご報告

1年半ほど一軒家に住んでいたという告白 家と家のあいだに挟まったおばあさんを助ける話も秀逸

娘を病院に

娘「痛ないで だから毎日でも通う(病院に)」ボケなのか?ボケてるのか?

免許更新で・・・

おもしろ教官が多いので講習を熱心にメモる西森の話
ファミリーレストラン下林のギャグ話や彼らが月1の単独ライブを続けていること等もあったがこんなところで終了。そろそろじゃんけんでプレゼントを当てたい。大体1回戦か2回戦でいつも敗退する。90 分のライブ時間を少し余裕を持って終わらせるところもなかなか。ライブ終了時間が決まっていることを喜ぶ来場客って案外多いはずなのよね。大阪泊でたまたま目にした深夜番組。子供のトークは面白くないと聞いたことがあるが、西森パパのアっくんトークはなかなかに冴えてましたぜ。

*1:1度しか開催されていない東京公演ではダイジェストだったことも

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よしもと漫才ライブ(15:30-) 2018-04-29-057

連休に遠出

4月末連休中にちょっとした用事で大阪に行くことが決まった。出発までおよそ2週間という時期に話がくる。商売人と娘として世間様とズレた日程で休みが取れる家で育ったのと現在フリーという立場で仕事している身として繁忙期をずらして休みが取れるので「盆暮れ正月GW、出かけずにじっとしておくべき」という教えを忠実に守ってきた。連休に遠出をするということに関して若干の嫌悪と緊張が走る。連休に遠出。一般的には普通に受け入れるべき文字列であろうことは理解出来るのだが私にとっては公道で全裸程度にはあり得ない出来事だ。まあでも遊びに行くだけじゃないしな・・・とブツブツ言いながら、ホテルも新感線も帰りの飛行機も無事確保出来ることがわかる。これには相当驚いた。GWなんか半年くらい前から気合入れないと泊りがけの外出なんて不可能だと思っていたからだ。予定は4/30-5/1に少々ある程度。半日ほど早く入って色々とライブを堪能しようと判断するまでの時間は案外短い。
それはそうと最近ライブ日記の更新が遅々として進んでいない。空白の2-4月あたりはさらっと。後はもう題名にちなんでポルシェの速さで更新したいとそう願うばかりである。日記を書き続けるモンスターエンジン西森、いつ聴いてるの?いつ読んでるの?と不思議で仕方ない爆笑問題太田、企画ライブを次々に成功させラジオの見学・聴取に余念がなくしかも大抵の単独ライブに顔を出す(だから何人かいるんじゃないかと私の中で「あいつは何人かいるはず」説が浮上している)XXCLUB大島達の顔を思い出して反省。私は彼らより時間があるはずだ。書け書くんだ私。

だから書く

NGKの向かいにあるよしもと漫才劇場。モンスターエンジンを熱心に見ていた時期に同じ建物の地下(baseよしもと)によく通っていたものだが、それが一旦今の5階になり(5upよしもと)なんだかとてもシンプルな名前に落ち着いた当劇場。今年に入って3度目ではあるが毎回これらの写真に少し圧倒される。
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なんだかいいじゃない。ちゃんと賞を称える感じ。 モンスターエンジンに加え、R-1ぐらんぷり優勝の濱田祐太郎はじめミキ・ダイアン・和牛等ならば見てみたい(ただチケット入手困難)なラインナップなのでどうにかこうにか売切れチケットを探し当てて入場することに。割と余裕を持って到着したつもりが新大阪で新幹線のチケットが見当たらずモタモタ お陰で美たんさんまで見逃す。今のところ大阪でしか観られない若手を観るのも醍醐味だったのに。
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新喜劇付きのライブを観るのが久々なのでライブ中盤に新喜劇があることに少し驚く。私はたまに(大変失礼ながら)新喜劇を観ずに帰ることがあるのでソレ対策か。新喜劇には未だ慣れない。大阪の友人は揃って好きだというが私にはあまり馴染まない。一時期モンスターエンジンが新喜劇に出演していたのがTVで放映されたのを観たことあってもだ。予定調和の笑い、これがわかったら私も本物だ。落語等の古典芸能が好きなのもあって「その時」がきそうでもあるが。
気になったので一応メモ
新名徹郎:ダ・ヴィンチというコンビでbaseよしもとで活躍
奥重敦史:おいでやす小田と土瓶というコンビを組んでいた
このあたりはいつか何かのために

他、濱田祐太郎は大分アレンジが加えられていたとは言えほぼ全組アリネタ。笑いが確実に取れるネタで連休中の客層に訴えかけるのは常套手段、とは言え東京住まいの私でも*1知ってるネタばかりというのは少々物足りない。こんなのお笑いライブファンのクソみたいなエゴ、とわかっていてもだ。そんな中でモンスターエンジンは新ネタだった。正確には金曜の単独ライブで披露したばかりの新ネタだった。これはラッキー。このためにこのライブを観たと言っても過言ではない。ただこの日の漫才劇場での3ライブともこのネタで挑んだらしいので、レギュラーのネタでも3ライブともネタを変えたであろう他メンバーよりサービス精神が旺盛とかそういう風にも思わない。特筆したいのは最近彼らの漫才の調子は頗るよろしい気がするということ。昨年のM-1予選あたりからビンビン感じる調子のよさ。ファンの熱さと暑苦しさで色々語ってしまいそうだが*2止めておく。声が非常に出ている。芸歴の浅い若手さながらだ。これが調子がいい一番の要因であるわけがない。ただ書いておきたい。そういう副産物を産みだすくらい最近のモンスターエンジンはいい。モンスターエンジン(とコウテイ)を気軽に見られる大阪のお笑いファンがうらやましい。

ここで止めようと思ったが散見されたTOKIO山口達也メンバー弄りについて少し。笑いのためにということで加害者とそのファンの心理はこの際ちょっと脇に置かせてもらう。私は被害者心理に着目。山口氏を弄る芸人たちの中に「重大な犯罪を犯した」「被害者に寄り添う気持ち」がないとしたら(もっとわかりやすく言うと「キスくらい」とかましてや「女子高生にも責任が」とか1ミリでも思っているとしたら)割とその芸人のことを見下してしまうと意見をこの事件に対して持っている。被害者の気持ちを考えて山口の名前を出すな!とは言わない。笑いのためなら時事ネタを弄るのは芸人のサガだし常套手段ということは理解している。性犯罪やハラスメントと笑いの関係が問われる時期にきていると思ってると言いたい。これからの若手にはそのあたり鈍感であって欲しくない。古い人間の悪しき考え方は若手が崩していかないと。ただし笑いという芸能では難しいのではという懸念も頭をよぎる。

鋭い観察結果も少し。

トットに失礼なことをした。これでは拍手が異様に長かった表現になっていない。私も精進が必要。

*1:例えば今のところあまり東京では滅多に見られないダイアンとかツーとライブとかも

*2:何せ私がお笑いライブ通いが日常と化したのはモンスターエンジンがきっかけであるからだ。

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このしずるがすごい! 2018-04-11-048

今、しずるが面白い

12-13日ぶりのお笑いライブだ。10日以上行かないと禁断症状が・・・ということは一切なく、私はお笑いライブ中毒ではなくお笑いライブが私の日常の単なる、でも欠かせない1ピースなのだなという実感。
このしずるがすごい!に関しては「久々の」「せっかくの」にピッタリの素晴らしいライブだったということは間違いなく、しずるを昔からきちんと追いかけている方々に羨望の念を抱いたくらいだ。しずるは追いかけ甲斐・分析甲斐・分析までしなくても色々な感情を抱き甲斐・・・と色々な「し甲斐」のある、そんできっと二人とも色々な意味での甲斐性のあるコンビなのである。私はしずるを目にした瞬間からずっと嫌いではなかったがずっときちんと観ていたわけでもなかった。この事実に対し後悔とまでは言わないがなんらかのモヤモヤする気持ちは生まれる。
そう、私は「今、しずるが面白い」と全力で思っている。なぜ、今なのか。このライブに来て少々わかったことをどこまでちゃんと書けるか、いざ勝負。
なんて気持ちで書き始めたらもう正確な文字数を言うのも嫌なくらいの分量になってしまった。このしずるに対する筆圧を含めてライブの感想であるのできちんと読んでもらうというより飛ばし読みをしながら「まだ終わらないのか」くらいの心持ちでこの文章に触れていただけると幸いなのである、と言い訳めいた始まりをさせていただく。



どのしずるもすごかった

〇〇がすごいは何回か行われているライブ。SLASH-PILE*1主催。過去実績として○○に入るのがニューヨーク・インポッシブル等。ゲストの芸人がメインの芸人のネタで一番好きなものを提示。それをメインの芸人が披露。それについてのトークという流れ。

「このしずるがすごい!」でも(多分他の回と同じく)5名の錚々たるゲスト陣(後述)
その5人が選んだ珠玉の5本。最近やっとしずるに注目している私でも4本見たことがあり、1本は知らなかった。ファン向けマニアックというより、代表作になりうる共感を生みやすいネタを中心に構成されたライブだったかもしれない。知らなかった1本に関しては生粋のファンの方からの「あのネタね!」の声には出さないがはっきりと期待を孕んだ感情が生み出した空気が心地よかったくらい。

ああ注目しなくても目に入ってくる存在であり続けているのだなという感慨と
このネタで「ああ」となる昔からのファンの方がうらやましいという感覚と

この記事でも書いたがしずるはいつまでも現役でいるし、もう少し言葉を補足するのであれば売れているといわれていた時期でも少し落ち着いた(売れていないとは言えないと思うが、ルミネキャパ450席超が単独ライブで即完というわけでもないというなんとも絶妙な立ち位置だと思う)今でも高品質のネタを作り続けているというところ。これが現役たるゆえんだ。芸人でもない私がこんなことを言うのもおこがましいが忙しさも暇もネタを作らなくなる理由になり得る。しずるはその「理由」に目もくれないコンビだということになる。
国民の多くがしずるを目にするきっかけとなった番組は日テレ・フジテレビ系列のお笑い番組であったかもしれないが、私はやはりTBS系列のキングオブコントで「現役感」を少しずつ確実に堪能することになった。そして年々彼らに対する注目度が高まっていく自分に明確な言葉で理由付けしてくれたのがこのライブ。大きなキーワードは2つ。

1.多彩にして多才
しずるは二人ともネタを作る上
池田:シリアス・村上:ほのぼの
池田:銃・村上:青春
池田:バカバカしさ・村上:哲学
(塚本曰く)池田:洋画・村上:邦画
等、対比が鮮やかな傾向がある。らしい。
対比は必ずしも固定ではなく、池田が「村上っぽい」ネタを、その逆で村上が「池田っぽい」ネタを生み出すこともあるという。二人のネタ作りはどちらかがネタの骨格となる「原案」を出し二人で少しずつ調整していくというスタイル。二人で一つながら、足りない才能を補うという感じではなく溢れる才能をうまいこと二人で増幅させている感がある。
さらに青春コントという強烈なイメージでTVお披露目を済ませた後、銃系シリアスコントというこれまた強烈なイメージへと、ごく自然な感じで移行がなされた。これからまた移行があるかもしれないと思わせるし別になくてもいいとも思わせる。多分これはイメージ戦略とかそういうセコイことではなく、ただ彼らの頭に浮かぶアイディアが常に流れ続ける水のように1か所に留まらないということなのだと思う。加えてしずるは「しずるっぽさ」という人前に立つ者が持っているべき「わかりやすいイメージ」という強烈な名刺をきちんと保持しつつ、その武器であるはずの「しずるっぽさ」さえも根底から覆すようなコントも量産する。それら質も驚くほど高い(かつ強烈なバカバカしさを伴うことも多い)。
大袈裟で語弊があるかもしれないが、彩りと才能を感じずにはいられないのである。
村上が「池田が作りそうなネタは池田に任せている」とこのライブ中に発していた。本来村上も原案を出せるし出した実績のある、シリアスで銃が出てきてバカバカしくて洋画を思わせるような作品は「池田が作るから」と手放すとのこと。ただその気遣い?制限?は、そのうちどうでもいいものになるのではないかと思う。才能溢れる人物に妙な束縛は似合わない。現にこのライブで披露した、コインらんどりー。シリアスでバカバカしく、妙に哲学的な一面もあり、洋画っぽい気怠さと邦画っぽいメッセージがあったように見えた。

2.キングオブコント2016準決勝
キングオブコントがはじまったのが2008年。しずるが決勝に進出したのが第2回大会の2009年。ここ数年で特に気になっているというのはいささか遅くはないか?とは私の自問自答。ただこの日のゲストが明確な言葉にしてくれたお陰で問いにピリオドが打たれた*2


しずるのキングオブコント2016準決勝の「突入」*3
俺はあれを見ていて、壮大な森の朝を見ているような気分だった。
俺ら次の次に出なきゃいけないのに半分は自分たちのネタに半分はしずるのネタをずっと見ていたい・自分たちなんかどうでもいいという意識があった。
笑いの天使が会場にたくさん舞い降りてきていた
数メートルしか離れていないのに25m離れた向こう岸でしずるがネタをやっているみたいだった



こんなことを天才コント師(後述)に言わせしめるくらい、2016年キングオブコント準決勝のしずるは特別な存在だった。2016/9/8*4に赤坂ブリッツにいた観客・スタッフ・芸人含めた1000人前後*5しか味わえていないし、もう振り返ることもできないのだが、しずるはあの日奇跡のようなネタをした。台本や演技がイイのは当然なのだが、ライブならではの醍醐味「その場にいる人全員で作り上げる一体感」が完璧すぎるほど完璧だった。深い森・笑いの天使・向こう岸・・・等の表現はこれを用いた芸人の高い表現力がなせる技である上にいささかオーバーに感じさせるかもしれないがあの様を描写するのにピッタリの表現のようにも思う。よっぽどしずるのネタが肌に合わなければ別だがあの日に同じ場所で同じような感覚を得た者は多かったのではないだろうか。ただ私のようにあの日を境にしずるに注目せざるを得なくなったかどうかはまた別の話だがこういった人間もまた少なくはないように思う。

このネタは2016年キングオブコント決勝でTV放映されたのだが、準決勝とはまるで別物という感覚を受けた。しずるの調子が悪かったわけではない。赤坂ブリッツと同じ敷地内にあるTBSテレビのスタジオ内ではあの一体感が再現できなかったというだけの話だし、その一体感は意図的に生み出せるものではないからだ。


多彩と多才/2016年キングオブコント準決勝、が大きなキーワードではあるがまだまだしずるへの感覚の説明が完結したわけではない。なので各々のゲストが選んだネタとトークの話を続ける。


以下豪華ゲストやその詳細


池田:洋画・村上:邦画

部屋(池田原案)by ラブレターズ 塚本直毅
まず、ゲストのフルネーム・コンビ(トリオ)名がプロジェクターに映し出されるのだが、そう言えば昔からのファンへの配慮か、ネタがはじまるまでなんのネタか確定出来ないようにタイトルを少しぼかした表現にしていた。プロジェクターに映し出されたタイトルは「部屋」
「なんで呼んだの?」のタイトルでお馴染みかもしれない。友人(池田)を呼び出しておいて一人漫画に読みふける村上。そこで違和感を訴える池田に対して・・・というネタ。
塚本曰く「せまーーいあるあるをよくついてくる」確かにあるあるではあるが誰も題材にしようと思わない、インパクト小さ目なシチュエーションが見事ネタに昇華しているとベタ褒め。池田:洋画 村上:邦画の名言はここで生まれる。
このネタの原案を出した池田は家に来て池田と言葉もかわさずに普通に風呂に入り寝て帰っていく田所を見て思いついたのだと言う。塚本は自分と三福エンターテイメントを思い起こす。塚本が相方の溜池に「しずるさんみたいなネタをやろう」と定期的に言っているとは驚き。

コントも人(にん)・哲学的=村上

洋服屋(村上原案)by ジャングルポケット 太田博久
これは初見ネタ。ただ関係者(ファン含め)間では問題作として認知されているご様子。「これほんとにTシャツですか?」で検索すると動画も出てくる。エリ首・裾・袖口のみのゴムバンドを身に着けた池田に対して店員村上がその「Tシャツ」の良さを語る。
太田は池田の受けの芝居~ズレの村上にツッコミを入れることも正すこともなく「これTシャツですか?」を繰り返すのみ~を絶賛していた。その顔芸もさることながらあるシーンで意味を持たせるために(下手をしたら観客が気付かないかもしれないのに)瞬きを一切しないという池田のこだわりもさすが。
このバカバカしく客を食ったかのようなネタを結成初期の頃に作っておきながら、大衆受けしやすい青春コントで世に出たという点でも太田はしずるに賞賛を浴びせかけ続けていた。しずる本人達にそんな気はないのだろうが「俺たちはこういうの(Tシャツ)も出来るがあなたたちはこういうの(青春コント)が好きなんでしょ。」というなんとも天才が考えそうな計算と裏を感じるのだと。
加えて太田はクレージーな村上に池田が翻弄されるネタが好みだとも言っていた。曰く「コントにも染み出す人(にん)」。漫才では人(にん)≒本来の人となり、が重要だしこれが反映されたネタは素晴らしいというのは昨今ある程度常識として認知されているがやはりコントもそうだというのが太田の言。露出しているキャラでは池田=クレージーのイメージが強いが風の噂で聞く村上の酒癖の悪さや天然ボケっぷりが身近な人間にこういうことを言わせるのであろう。
バカバカしさから池田の作ったネタかと思っていた太田。村上作だと聞いて驚いていたがそこですかさず池田が「これをTシャツと言い切るのは哲学。哲学的なのはやっぱり村上なんだよ。」と説明。さすがコンビ。互いをよく理解している。

空気張り詰め系・しずるの運と才能 ・(池田父による)お前らのネタって最初緊張すんだよ

殺し屋(村上原案)by ライス 関町知弘*6
こちらキングオブコント2009決勝の1本目で披露された「冥土の土産」あれ?冥途とどっちだと迷う気持ちもないでもないがまあ冥土とする。
関町曰くこれと「突入」が空気張り詰め系。これはしずるにしかできない。緊張と緩和と言ってしまえば(エンディングでも誰かが言ってたが)「そんなのコントはみんなそうじゃん!」・・・ん…待てよ…いやちょっと違う…とここは関町の肩を少し持つ立場でいたい。しずるは張り詰める空気がちょっと尋常ではない。どう言えばうまく伝わるのだろう、あの半端ねえ緊張。ここまで張り詰めといてすっと緩和するんかい?!とこちらをやや不安にさせる。で、急降下ながらごく自然に緩和する。単独ライブに顔を出す池田の父親が「お前らのネタ最初緊張すんだよ」という名言を残したのもわかる気がする。 
さらにここからMC田所も加わってライスとしずる、同期ならではの視点の話。
2006-2007年前後でしずるは謹慎*7を命じられライブのランクが降格。本来3-4分ネタをやるランクにいるはずだが降格して1分ネタを量産せざるを得なかったらしい。その頃に爆笑レッドカーペット(という1分ネタブームに火をつけた番組)がスタート。しずるは持っている、運があるという話へ。さらにその流れで爆笑レッドシアター(という内村光良がMCで若手コント師を中心に構成された人気番組)のレギュラーで多忙を極めたしずる。その中でこの「冥土の土産」をきちんと生み出した。本来なら1分ネタ・ショートネタだけを量産していればいい時期、その多忙にかまけてネタができなくなる時期なのではないかという考えはネタを作ったことのない私にも十分理解できる。いわば「普通ならば」の考え方だ。ただきちんと尺とストーリーのあるネタを作り続けたしずる*8.。これは立派な才能である。運と才能。しずるがこの世で認められないわけがない。露出も高く生み出すネタの質も高かったしずるに「今だからやっと言えるが悔しくて仕方なかった」と言葉に出来るライスもとても魅力的だ。
キングオブコント2009決勝の前日に銭湯に行った池田と田所。しずるの決勝進出を素直に喜べないどころか悔しくてたまらない田所はこっそり池田のすね毛の一部だけを剃刀で剃ったそうな。1本目がこの冥土の土産、2本目が短パンで足を丸出しにするネタ(卓球)だと知ってわざとやったと自白していた。魅力的と言ったのを早々に撤回したいのと素直で無邪気なやり取りににやけてしまうのと。まあこれが微笑ましい同期のエピソードというやつなのかもしれない。顔芸を最初は嫌がっていた池田がこのネタにより顔芸に覚醒。デコ皺は顔芸の勲章だという話もあった。

両方やりてぇ・ぶん投げている・コンビの代表作 ・命名基準

喧嘩(池田原案)by うしろシティ 金子学
いかにも喧嘩の強そうなチンピラ風情の池田と、いかにも喧嘩をしたことがなさそうな弱弱しい学生風情の村上が道端ですれ違い肩をぶつけるところから物語が展開される。見た目とは裏腹に喧嘩を売り続ける村上とそれをなんとかかわす池田というネタ。
ネタ披露後の第一声。「いやこれやりてえ。(どっちの役?と聞かれて)両方やりてぇ」と金子。コント師が優れたコント師に言われて嬉しくない言葉のはずがない。

さらにここからが、演劇的な話になり非常に面白くなる。
私自身、ラジオを聴いたり単独ライブに足を運ぶ程度にはうしろシティのファンなのではあるが、その実、この金子という男が何を考えてネタを作っているのか1ミリもわからない。ただこのライブではそれに少しだけ触れることが出来た。これもこのライブへの満足度を高めている大きな要因なのかもしれない。ましてやうしろシティ、最近*9全国ネットで放映されたENGEIグランドスラムでやっと全国に認知されたとラジオで話していた。正確には料理人として近年認知度が高まっている阿諏訪のいるコンビのネタがきちんと面白かったという認知をつい最近されたといったところか。キングオブコントの決勝に3回出場しているにも関わらずである。お笑いファンにとってM-1・キングオブコント等の賞レースは一大祭典のはずであるが一般認知度はまだまだ、とうすうすわかっていたことをまざまざと見せつけられた気がして私までショックを受けた。

話を元に戻す。

金子はこのネタを「気を抜いて見られるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」「ただこのネタはぶん投げている」と表していた。言葉足らずに感じるがほぼこの言葉「だけ」でネタの評をはじめたしほぼ説明もなく終えた。
役柄の日常や舞台を降りたときの背景を作り込む、というようなやりとりをここ最近お笑いに関する議論中でしょっちゅう耳にする。いや私が気付かなかっただけで昔から色々なところで話されていたのかもしれない。私がほんの少し演劇をやっていた時に一番衝撃を受けたし一番理にかなった役との向き合い方だなと思ったゆえ、こんなに普通にさらっと会話の中に出てくるのに少しひっかかりがある。もったいぶれと言っているわけではなく、「役作り」という経験したことのないものが簡単に大きな誤解をしてしまう過程を想起させるようなエピソードを大して説明もなく話してしまうことに若干の恐怖があるのだ。
なぜ舞台外の背景まで描くか。私は舞台上での挙動の「必然性」のためだと思っている。役柄に向き合えば向き合うほど出来なくなる(もっと言うとその役柄が選択するはずのない)挙動が増える。逆を言えば、このセリフはこの音でこのタイミングでこのボリュームで発するべきというような必然性が生まれたりもする。
そうなると丁寧で見やすくなる。
なぜ、それを、今、この言い方で?というちょっとした「違和感」が限りなく0に近くなるからだ。違和感は思考を止める。物語に没頭出来なくなる。だとしたら観客の思考を止めず物語に没頭させるために違和感を排除する作業は必然となる。ただこの排除作業、非常に地味だし時間もかかる。地味で時間のかかる作業を「丁寧に」経た作品はきちんと「気を抜いて」見れる作品になる。
繰り返すが金子は「気を抜いて見れるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」「ただこのネタはぶん投げている」とだけ言って話をどんどん進めていった。ややもしたら誤解が生まれそうな表現で、ただ彼の中では当然のことのように。
とにかくこのネタの池田にはバックボーンが全く見えない。村上が出てきて物語が始まるがこの前後で何をしているかはわからない*10、という話なのだが金子のターンが他4人のターンと比較して若干異質だったのはこのやり取りに代表されるように、終始続いた金子のコント観や彼の天才性が溢れ出て仕方なかったからである。天才は溢れ出てしまうものである。だからこそ言葉足らずにもなるということを金子を通じて実感せざるを得なかった。


続いて衣装の話。ぼんやりとしたイメージだけで正解がないまま店に行き、正解がないので何を購入すればいいのかわからないのにこれだけは「違う」というのだけわかると金子は言い、池田もそれに大きく賛同していた。特に「ダサい」を欲している際、古着屋に足を運ぶが店員に「何をお探しでしょうか」と言われて口をつぐんでしまうのは2組に共通するあるあるらしい。「ダサそうな店」と思って入店していることなど店員に言えるはずもない。
しずる池田演じる「赤いボーリングシャツを着た男」・うしろシティ金子演じる「帽子とサングラスを身に付けたおっさん」キャラも「様々なコントによく出現する同一人物キャラなのでは?」という取り沙汰され、前者は出没する州が、後者は出身の県が違う別人で決して同じにはして欲しくはないのだそう。
ところで関町が冥土の土産・突入を「張り詰め系」で同系統と称したように、金子は能力者・シナリオ通りを「コンビの代表作となりうる*11」で同系統と称していた。私はこの4本を「シリアス系」でひとくくりにしていたが、関町と金子の区分もわかるような気がする。前者は緊張と緩和の急激な差で笑いを取るネタ、後者は発想とストーリー展開に目をつけるべきネタ・・・ばっちりと正解ではないだろうがこんなところではないか。驚くべきは、村上:冥土の土産・能力者/池田:突入・シナリオ通り というネタ原案の内訳。才能がどちらに偏っているわけでもない。まさに奇跡のコンビである。
しずるの二人が次のネタの準備でハケた後も興味深い話は続く。MCの田所が金子に「登場人物の命名」について質問をしたのだ。曰く、「関係性が同等すなわち普段と近ければ金子と阿諏訪、関係性が変わった際もより普段と近い方が本名のままで片方の名前を変える。よほど外れる場合のみ両方の名前を変える」が基本だそうだ。加えて「うしろシティのネタは名前オチが多い。お茶村ピー介なり春そよ風木漏れ日なり。そういう名前オチを期待させないよう、ミスリードしないよう、名前オチではないネタは早めにキャラの名前を出すようにしている」と。
金子は風貌や話し方の雰囲気からその気配をほとんど感じさせないが非常に緻密にコントを作っている。
うしろシティとしずるは緻密さや繊細さの点で近い力量でネタを作っているし、両組ともたまにそれを大きく外すかのように「バカバカしさ」も惜しみなく披露する。お笑いの醍醐味だ。しずるは緊張と緩和に、うしろシティはファンタジーの中に潜む日常へのニヒルな視線に、それぞれベクトルを広げているが根本は同じなのかもしれない。いつか対決もしっかりとした共演も見てみたい2組である。

そこはかとなくおしゃれ・森・しずるはお手本

喫茶店(池田原案)by かもめんたる 岩崎う大
「企み」?「腹黒い」?等で認知されているネタだろうか。友人が互いに喫茶店で会話を繰り広げるのだが、金に汚い池田・女に汚い村上が自分の利のために相手を陥れるというネタ。腹黒い挙動の後に二人して常に同じ「悪い顔」をするのがこのネタのポイント。
独自かつ皆が納得しやすいコント観や理論を持ち合わせる岩崎が選ぶネタに緊張感を伴う期待があったが、意外にもこの一見シンプルなネタが選ばれた。私も多分会場にいる人も、そして出演していた芸人もこのネタではなくもう少し構成や発想が複雑なネタが選ばれるのではと思っていたのではないだろうか。
岩崎はネタ中何度もする表情にバリエーションを持たせることも出来るはずだしそれをしてしまいがちだが「同じ顔」とするところにしずるなりのそこはかとないおしゃれさを感じる。これがしずるだと言いたかった、と話した。
先述の「2016年キングオブコント準決勝のしずる」を「深い森」やら何やらに例えたポエティックな表現は岩崎によるものである。当然のように高い表現力、分析力とそこから生まれる説得力、賞レースの実績やら生み出す作品の質の高さから岩崎がするコントに対する言葉は的確で荘厳なものになる傾向にあるし、彼のいるトークライブは深い満足感が伴う。
そしてふいに「しずるはお手本」というような言葉を放つ。金子の「気を抜いて見れるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」を思い出した。ややもしたら(「きっちりしすぎてつまらない」というような)誤解を生みかねないし、いかんせん天才は言葉を省く、という共通点からである。岩崎は金子とは違ってその後丁寧に説明をしてくれた。外国人モデルが何を着ても似合うように、しずるが演じれば大抵のネタが「見られる」モノになるという意味での「お手本」らしい。 これもコント師が優れたコント師に言われて嬉しくないはずがない言葉であると思う。
私はこのトークのヒントになるような経験をしたことがある。数年前にルミネで開催された「天竺鼠×しずる」のライブに於いてである。お互いが持ちネタを披露したりネタを交換したりという主旨の2マンライブ。天竺鼠が演じるとあり得ない不条理の天丼で笑いがこみあげてくるネタなのだがしずるが演じると日常の中にあり得るズレのように感じさせられたのだ。天竺鼠の台本も演技も悪いわけではない。むしろイイ。ただしずるが演じるとスパイスのような風味のような、いずれにせよプラスのものが確実に上乗せされる。そしてなんとなく説得力も増す。
本気でダメな台本と本気でダメな演技のコントをしずるが演じ直すところを見てみたいと思ってしまった。
岩崎は太田とは逆に池田が強烈にボケて村上が訂正していく形がベストと言っていた。村上がボケたりズレたりすると笑えないサイコになる、とのこと。
きっとどちらも本当でどちらもアリなんだろう。ここでも多彩なしずるを感じた。さらに岩崎は全く押し付けがましくないアドバイスでしずるの今後を示していた。自分達を信じてもっと突き抜けて良いというような内容だったのだが、同じ立場のしかも自分達を脅かす存在になりうる可能性のあるコント師にそれを伝えられる岩崎も底はかとなく魅力的だった。



最後に

ここまでのボリュームで書くと誰も細かく最後まで読むまいという安心感から逆にあれもこれも書けた。書くことによる「読ませない」である。
文中で触れなかったが、MC田所がそれぞれのゲストに選んだネタは参考程度に「どちらが作るネタがより好みか」という質問をしていた。村上弄りというノリも入ったので結果自体はどうでもいいのだが、結果を聞くまで真剣に相方に勝ちたい、自分が選ばれたいという姿勢を見せる二人にますます興味と好感が高まった夜。今思い出してもなかなかに楽しい。

*1:お笑い中心のキャスティング団体。K-PROと同種の団体と考えてよさそう。ゲスト芸人の傾向からなんとなくお金があるように感じる。株式会社だしね

*2:色々なところで話されているエピソードなのかもしれないなとちょっと思った

*3:ちなみに「このしずるがすごい!」当日にこのネタを披露していない。

*4:準決勝が2日間あるうちのしずるが出場した当日

*5:キャパと合わせて本当に大体の数字

*6:プロジェクター表記が智弘だった。相方でありMCの田所曰く「関町は本当に名前をよく間違えられる」と

*7:度重なる遅刻により2回ほどという話を聞いたことがある

*8:レッドシアターのレギュラーメンバーの中で、ジャルジャル・ロッチ、あとしいて言うなら柳原加奈子も「ネタ」を作り続けている芸人に私には見えている

*9:2018年4月7日(土)

*10:原チャリに乗っているらしい

*11:うしろシティでいう「転校生」・ライスでいう「バナナ」。ライスの代表作を「バナナ」としたのは金子なりのちょっとしたボケ。「監禁(くれぃ)」でいいだろう、ライスの代表作は

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トンツカタン×卯月×岡野陽一といかちゃんの「オールナイト9」2018-03-30-047

夜は寝る女とオールナイトライブ


オールナイトか・・・

昔から夜遊びは大好きだが24:00過ぎると寝る。
人んちでも寝る。店でも寝る。静かだろうが大音量だろうが寝る。

うん、苦手だオールナイト。
さらに裏ではこんなライブ
まんじゅう大帝国のおしゃべり大外交 – LOFT PROJECT SCHEDULE
リンク先が切れてもタイトルだけは残しておきたい、そうまんじゅう大帝国初のトークライブ。

どちらか一つだけだったら「オールナイトはどうせ寝るから」と行かなかった。
ただ2つ開催されることで「なぜか迷う」という思考回路が発動しなぜかまんまとSHIBUYA LOFT9に向かっていたのだ・・・
はぁ・・・どういうこと?

結果、寝た。ただ4時間の公演中20分程度だ。よくやった。

特に卯月パート。お目目ぱっちりとはこのこと。
26:00台という非常に厳しい時間帯ではあったがチケット代が10倍になってもよかったという感慨を得る。



トンツカタン60分パートでそれぞれの休日話

15分休憩

卯月45分パート(詳細後述)

15分休憩

即席ユニット:岡野陽一といかちゃんパート30分 まるで父と娘のような会話

15分休憩

全員が出てきて60分:配信ナシとは言え借金・東京03・貪欲な卯月酒井・・・くらいしかキーワードがなかったような


かろうじて全員が写る写真



お話を作るのが好きだったじゃないの、私たち

卯月45分パート詳細

ラママ*1の出番を終えて既に泥酔、酒を注文する酒井・木場。 本当に飲めないのか自分だけはしっかりせねばなのかクリームソーダを注文する林田。

最初、芸人仲間4人で同居生活をはじめた木場の話や初期の卯月を応援している同級生の話・・・等々ファンサービス感のある雑談から。

TV・ラジオのレギュラーを逃し木場のちょっとうるさいお笑いマニアさながらの分析をしはじめたあたりから雰囲気が一変*2 トリオのメディアでの扱われ方とそれへの対応、2人ネタの用意、最高傑作*3ネタ:募金について、そして「きちんと集まってネタを作る時間を取ろう」「昔はもっと練ってストーリーを一生懸命作っていた(が今は時間がない・・・)」そして「昔はもっとお話を作るのが好きだったじゃないの、私たち。練って練ってさ・・・」と酒井等。
泥酔なのにいつも通り流暢に話す木場と泥酔して初めてそのトーク力を人前でいかんなく発揮出来た酒井はこの日のミモノ。

詳しくはこちらの動画を見ていただきたい
freshlive.tv

※多分60日前後限定のアーカイブだと思うのでリンクが切れたらこの記事からも削除する

改めて見てもとても面白い
改めて見るとあの時ほどの衝撃はない

私が何に衝撃を受けたか。
こちらの記事を読んでいただいても読まなくてもいいのだが↓
卯月 第一回 単独公演「そうですか」 2018-01-25-26-014-015 - アマガエルの大合笑

卯月初の単独ライブに行った際、実際面白かったのと盛り上がりに水を差したくなくて遠回りにしか言えなかった言葉がある。
「それでも募金を超えるネタはない」と。

やはりストーリーや構成が練られた「大ネタ」は偶発的にしか出来ないものなのだろうか
募金が偶然の産物だったんだろうか

生意気で口に出すことすら憚れることを考えていたのだがもうこんなことを考えなくて済む。

卯月に時間が出来たのか
卯月がなんらかに気付いて吹っ切れたのか

正確なところはよくわからない。

ただ卯月はこれからストーリーを意識したネタを生み出すのであろう。
近いところで2018年のキングオブコント、遠いところで卯月の素晴らしき未来の幕開けに期待と楽しみが生まれた。

この日のトークライブで私の中で卯月に対してほんの少し抱いていた違和感が完全に拭われた。
いささか身勝手な感慨で共感は得られないかもしれないが、トークの面白さ奥深さに加えてこれがあったからこそ10倍の値段を払っても高くないと思えた。

改めて、卯月のこれからには期待しかしていない。


オマケ

ShibuyaLoft9
ロフト系の中でも比較的新しく、新宿ロフトプラスワンの風格にはまだまだ敵わないと言いそうになるが私がこのライブハウスをロフト系の中でもこよなく愛する理由がある。
下手前方側の席である。
ここがピンとくる方はいるだろうか。
演者と同じ目線で真横からステージを見る形の席。
[:W300]

ステージをこのように撮れる席。

壮観かつ快適な席ゆえ通常時間帯のライブでは即埋まっていることが多いのだが、オールナイトということで比較的余裕があったため迷わずこの席に座った。
ただ場合によってはここ、関係者が座る席に見られることもある。実際初めて行く方は座っていいものかどうか戸惑うとも思う。
私が居眠りしている間、同行の友人が「今日マネージャーさんいらっしゃってますか」と聞かれたのはご愛敬。



トンツカタン×卯月×岡野陽一といかちゃんの「オールナイト9」
日時:2018/3/30(金) 24:30~ 240分※休憩あり 場所:LOFT9 Shibuya(渋谷)
料金:前売:1000円  当日:1200円

*1:正確にはラママ新人コント大会。コント赤信号リーダー渡辺が主催する若手発掘ライブ。コント以外のネタもある。音楽ライブハウス渋谷ラママで30年前後月1で開催中。コーラスライン・準一本ネタ・一本ネタの3レベルに分かれて開催されるライブ。卯月は2018年3月現在準一本ネタランク。

*2:私はあれを「卯月方針会議」と呼んでいる

*3:と私が呼んでいるだけなのだが実際世間の評価もこの募金で上がったと推測する