アマガエルの大合笑

更新速度:ポルシェよりはるかに遅い ぴろよによるお笑いブログ ライブ多め

しずる単独ライブ『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 ~2日目~』 2018-02-23-032

知っているようで知らないしずる

『※個人の感覚によるものです。』
とでも言っておかないと色々と横槍が入りそうな懸念はあるが始めたいと思う。


しずるとは・・・
・よしもと芸人
・THE THREE THEATER及び爆笑レッドシアターにレギュラー出演
・青春コント
・キングオブコント決勝に4回出場の常連
・演技に定評があり


このあたりは多少お笑い好きであれば(正確な番組名や数字はうろ覚えであろうが)共通認識と言ってしまって問題ないと思う。それくらいしずるは世間に認知されているということにも繋がる。キングオブコント開始直後にTHE THREE THEATERがはじまったこともあり、この頃私の中のしずるの印象はレギュラー番組や人気ぶりをチラりと見つつ「なんとなくミーハー」とキングオブコントで見せる「実力派」を行ったり来たりしていたように思う。
「なんとなくミーハー」感覚を抱いてしまったせいで彼らを積極的にライブで追いかけることをしなかったことが悔やまれるのだが、それでもキングオブコント*1での冥途の土産・シナリオ通り・能力者にはレギュラー番組で見せる青春コントとは全く違った底の深さは十分感じていたし、なんなら天才特有の恐ろしさすら漂っていた気もする。1本目がとにかくすごい、2本目は・・・という印象を抱きがちだが、大会から時間が経って改めて確認すると、2本目は・・・であったはずの卓球・びっくり先生も独特の着眼点と物語の構成が素晴らしい。ただ、パンティを連呼する映画監督だけはどうした?しずる?となってしまったことも隠さないで告白しておこう。着眼点は素晴らしいが下ネタだからというわけではなく、同じ単語の繰り返しにさして新しさも感じなかったというか。彼らを「ライブ」で観ていたのはキングオブコントの予選とLIVE STANDのようなよしもとが絡む大きなイベントのみ。TVのレギュラー番組やレッドカーペット等で見かけることはあっても能動的にしずるを追いかけなかった時期は長い・・・のが私だ。

ライブに行きたいという衝動が生まれたのは、2016年キングオブコント決勝でも披露した突入を予選で観た時。

素直に面白かった感動を呟いているだけではない。ここ数年はよしもとの劇場以外に出る芸人を好んで選び、別の言い方をするとよしもとの劇場に出ている芸人の事情にどんどん疎くなっていたことを悔いている呟きである。2016年しずるの優勝もあるのでは?ライスとの直接同期対決が楽しみ・・・と1人大分興奮していたが、結果は10組中6位。優勝はおろか5組が進出する最終決戦すら出られず池田がたまらず「関係ねぇ、2本目やってやるよ」と絶叫したのも記憶に新しい。
今でもこの「低評価」が解せないというかどこか許せない私がいる。しずるは友情・恋愛などの青春系コント、拳銃や特殊なファンタジーがキーワードとなるシリアス系コントの特徴的な2面を有するコンビなのであるが、これはコンビが二人ともネタを作れるということと二人の作風が各々どちらかに偏っている*2ということに起因する。ただこの「突入」うまいこと青春とシリアスのミックスとなっている。長い間きちんと追いかけていなかった分際でこんなこと言うのは生意気かもしれないが「集大成」を感じるネタであったのである。その集大成があの点数・・・1番という出順か?審査員の松本人志もツッコんでいた紹介Vとネタの矛盾*3か?何故だ???
しかし評価に憤慨していても仕方ない。自分の目で確かめたくなったのだ。6GUNSというユニットライブやトークライブにも足を運んだ。
呟きにも表れているが、ずっとしずるを追いかけていた人に少し嫉妬をしたりもした。2017/7/16 夏の単独ライブ3日間の最終日昼の部、全5ステージ中の1ステージの最前列センターを確保していた。だがその当日の晩、最愛の叔母が闘病の末亡くなった。朝から叔母の隣でつきっきりだったにも関わらず、冷静にその日の予定を変更する中で引き取っていなかったチケットを友人に譲ったことを鮮明に覚えている。日程まではっきり覚えているしこれからも忘れないのにはそういうわけがある。

冬単独・夏単独の年に2度のしずる単独ライブ体制昨年から始まったと言われている。冬単独はFES.ゆえ音楽が楽しめる・・・?ひっかかることは多少あれど上記のような思いを抱えて『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 ~2日目~』に足を運んだのである。
ちなみに少しのひっかかりを修正・共有しておくと2018年の冬単独に1日目があったわけではなく1日目は『SHIZZLE IN JAPAN FES.2017 ~1日目~』という形で昨年開催されているし、エンディングでも触れていたが来年『SHIZZLE IN JAPAN FES.2019 ~3日目~』が開催されるそうだ。音楽フェスということを意識した回数表現だがいささか紛らわしい。しかもしずるのことである。実際の音楽フェスよろしく3日目前後で一旦区切りをつけて別企画を考えることもありそうな気もしなくもない。10日目・20日目と続くのであればそれはそれで面白いが。


コインらんどりーというネタ

満を持してと言おうか、溢れる期待値を抑えきれぬままとでも言おうか、向かった先に幸運と満足があったのは何回でも伝えていきたいところ。 申し訳ないがまだまだお付き合いいただきたい。

タイトルの付けにくさ
漫才
ネタ尺
音楽
コインらんどりーというネタ



このあたりがとても印象に残っている。

タイトルの付けにくさ

改めてしずるのネタはタイトルが付けにくい。導入の場面や心情のやりとりから後半急角度の「転」が起こり、冒頭から想像も付かなかったオチに繋がるからである。起承転結の構成がしっかりしたネタを量産するコンビは少なくはない(がやはり高く評価されやすい)けれども、しずるの急「転」直下な展開には改めて目を見張った。今回、作・演出の全てを担当した村上曰くこのような「セットリスト」になるということであったが。 f:id:piroyo:20180224114147j:plain
見えにくいかもしれないが後述するのでしばしお待ちを。
このセットリスト紙質が非常に上質ゆえとても大事に持ち帰ってきた。

漫才

しずるの漫才が見られるのはこの冬単独、フェスのみだとどこかで聞いたような。以前何かの企画で観た記憶がなきにしもあらずなのだが、コント同様、起承転結が素晴らしい上、漫才らしい「二人の立ち話」の様相もきちんと呈している。コント師が作る漫才ではないな、と改めてしずるのすごさを実感。

ネタ尺

短くて6分強長くて14分弱のネタ尺で8本100分前後。若干長めの尺なのに全く飽きない。テンポというより物語に食いつかせる力が高いのがしずるだ。ライブ終わり良い小説の読後感のような感覚があった。

音楽

ネタ間Vがない構成。そのかわりネタ間BGMが非常にポップ。最近の単独ライブではBGM選びにある種の「センス」を織り交ぜてくるのが主流だがこのライブでは村上がわかりやすくかつ自分が好きなものを選んできた感じが逆に新鮮で、普段私はそこまでBGMを気にしないし絶対やらない*4のだが思わずメモをとってしまった。特に前半部分は90年代-2000年代前半の曲オンリーでポップと郷愁を煽った感じが強かった。後半で2010年以降の曲チョイスへと変化し「センスくるか?」」と身構えてみたもののむしろ作品の世界観を紹介したり邪魔しないようなチョイスなんだろうなと思わせるような印象。その後半で竹内まりあの曲を配置してきたのもなかなか。
ネタを想起させるような曲を選んだのかもしれないというのに気付いたのはライブが終わってから。それくらい音楽がいい意味で存在感を消して作品に溶け込んでいたにも関わらずちょうどいい具合で印象を残してたということなのだろう。抜け目がない。前奏が長めの曲も必ず歌詞を1-2フレーズ聞かせてからのネタinだったのもとても良かった。
というわけで、
・90年代-2000年代曲はその場でイントロドン
・東京事変(2013年頃)に関しては一時期友人とカバーをしていたことがあったのでイントロドン
・ポルカドットスティングレイはそのカバーバンドのドラムが現在ハマっているということで即座にではないがうっすらイントロドン
・残りの曲は歌詞の印象的な部分を書きとめて必死で検索
近年音楽から遠い生活を送っている私にとっては一番骨の折れる作業で苦労した。ただせっかく調べて作ったので以下に記しておく。OPからネタ繋ぎの曲のセットリスト(ネタ名は太字)上で載せた「セットリスト」画像と合わせてお楽しみいただきたい。

漫才
OP曲:東京事変「群青日和」

エレファントカシマシ「悲しみの果てに」
記憶ほとんど喪失
JUDY AND MARY「BlueTears」

ウルフルズ「あそぼう」
一緒に踊ろう
小泉今日子「マイスイートホーム」

UA「情熱」
コインらんどりー
Cocco「Raining」

漫才
リーガルリリー「リッケンバッカ―」

ポルカドットスティングレイ「人魚」
踏み切りだけの距離
竹内まりや「純愛ラプソディ」

クリープハイプ*5
ジャズライブ
3markets[ ]「バンドマンと彼女」

かりゆり58「オワリはじまり」
卒業式~屋上にて
ED曲:HumbBack「星丘公園」


その他:ジェーンバーキン・ブンバボン体操・ミスチルの抱きしめたい・アンジェラアキをカバーしたMayJ等々がネタ中に

書いてしまえばなんてことないが大変だったよ・・・。ネタの感じも想像していただけると幸い。

2018/3/25追記:ご本人が曲をツイートされてましたので。

漫才の出囃子にまで目をつけなかった私の詰めの甘さが感じられる。 2018/3/25追記了

コインらんどりーというネタ

コインらんどりー。誤字ではない。
表現者はこういうことをやりたがるが100%表現しきれることは稀*6、ただしずるは今回「こういうこと」を100%以上表現してきた
というようなことを考えながら観ていた。
外は雨のコインランドリーにて。何もない街に引っ越してきた男(池田)とその街に住む女(村上)。
気怠く、どこかナルシストで、絶望しているように見えて自分のプライドと美学だけはある人間同志が会話というより言葉を交わし、そして恋に落ちていく。いや落ちないかもしれないがこの後きっと体を重ねるであろうことだけは確信させる・・・
雨の中のコインランドリーが舞台では必ずしもないが、こういったテイストは小説でも演劇でも芸人のネタでもたまに見かける。多分「難解だ」「なんとなくかっこいい」という印象を大衆に残したい表現者がいるんだろうなくらいに捉えていた。その難解さゆえ、解説・解読したくなる人も現れるが私自身その「解読」という作業に嫌気がさしているところもあった。
ただ、しずるは今回のコインらんどりーでそのテイストをさらに一段掘り下げた。実はギターが弾けないというセリフと停電のたびにキスをすること等々によって、一見意味ありげな言葉を交わす男女が「難解」と「かっこよさ」の風味を残しつつ、完全に笑える存在になっていた。髪の毛を切り落とすつもりがハサミが刺さって抜けなくなってしまったことも不幸中の幸いのアクシデントなのでは?とさえ思わせた。
エンディングで池田がセットリストの「らんどりー」表記にツッコミを入れ*7「相方にこんなこというのもあれだけどこんなネタ観たことねえ」と言い放った。多分それは違う。こんなネタをやろうとしている芸人のみならず表現者は数多いたのだ。構造の複雑さゆえファンが勝手に「解読」するという楽しみ方をする以上にきちんと伝えられた表現者がほとんどいなかっただけだ。

コント中、村上が全編女装だったこと、もしかしたら「村上らしさ」全開のポップな構造、村上オジ(本物)がステージに花束を持って上がってくるところまで含めて村上祭の単独ライブと言いたくなるが、この「コインらんどりー」のネタがネタとして完成し、洗練され、きちんと我々のような大衆に伝わったということの背景に池田の演技力やキャラクターが大きなものとして存在し、そして二人のスキルがちょうどいいバランスであることに気付けたことの方が印象に残った。

しずるは今面白い

完全な私事であるがバタバタしていて参加が危ぶまれたが結果、行けて本当に幸運であったし大正解であった。
しずるは2018年の今が一番面白いしこれからもっと面白くなっていくであろうことを確信したりもした.
芸人の世間的評価・・・改めて何で測られるのか難しいところだが、メディア露出の多さ、ライブ会場の大きさ、チケットの取りにくさ、普段の会話で話題にのぼる率・・・等がそれにあたるのであろう。面白さとは確実に違うし、売れている・売れていないとも多少違うと思ったので敢えて「芸人への世間的評価」という言葉を使っている。その世間的評価が「極めて高い」と言われる時期が確実にあって、今はそうではない、ただ実力と勢いは世間的評価が「極めて高」かった時期より確実に増している芸人はそんなに多くないが・・・そりゃそうだ。大抵は腐る。・・・・確実にいる。それがしずるであると思っている*8。しずるは腐るどころか手を全く抜かない存在であり続けているのだ。
どうやら前日まで数席ではあるが今回の単独ライブチケットが余っていたというではないか。村上が毎日のようにツイッターで宣伝する様も目にしている。このコンビの単独ライブチケットがこんなに簡単に入手出来ていいはずがない。
チケット代か?値段が1.5倍になっても即完してもおかしくない質だ。世間はもうしずるに飽きたつもりでいるのか?はたまたTVでは見えない彼らの活動に本当に気付いていないのか?世間がうかうかしている間に私が観ればいいだけの話だ。強がってみようとしたが、非常に歯がゆい。
以前、後輩のトークライブにシークレットゲストで参加した際に、村上が「知名度は絶対に下がらない。人気は下がっても知名度は絶対に下がらない。話題にする人は少なくなっても知名度という現象だけは残るからそれをどう扱うか」という旨の言葉を残している。

チケットが取れなくなるのも困るが、こんなに完成されたライブの良さに気が付いてない人がいるのも許せない。何が糸口になるのか。キングオブコント優勝・・・なのか?そうではない何かがしずるに残されていて欲しいというのは単に私がしずるやお笑い界に求めている身勝手な美学ゆえだが、いずれにせよ知名度という実績と土台を過去のものとせず、しずるにはもう一回くらい世間に「見つかって」ほしいのである。


しずる単独ライブ『SHIZZLE IN JAPAN FES.2018 ~2日目~』
日時:2018/2/23(金)19:30~110分※120分予定とされていたが実際にはトーク込でこれくらいに終了
場所:ルミネtheよしもと(新宿)
前売:4000円 当日:4500円 立見:4000円

*1:2009年:冥途の土産・卓球 2010年:シナリオ通り・びっくり先生 2012年:能力者・映画監督

*2:聞いたところによると村上原案が青春系・池田原案がシリアス系に寄る傾向は強いものの、立場が逆転したネタも多くあるとのこと

*3:紹介Vでは村上がその当時父親になったばかりのことに触れているが、ネタ中で子供がいる設定なのは池田という矛盾が生じていたのだ

*4:自身が音楽にそこまで明るくないというのも起因している

*5:「クリープハイプ、多分。あの声」とメモってある。肝心な歌詞が書いていない

*6:受け取り側の頭に「?」を残すことになると私が考えている節がある

*7:同時に”記憶ほとんど喪失”ネタの”ほとんど”の部分にも村上らしさを感じていたらしい

*8:私には三拍子というコンビもそう見えている