アマガエルの大合笑

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このしずるがすごい! 2018-04-11-048

今、しずるが面白い

12-13日ぶりのお笑いライブだ。10日以上行かないと禁断症状が・・・ということは一切なく、私はお笑いライブ中毒ではなくお笑いライブが私の日常の単なる、でも欠かせない1ピースなのだなという実感。
このしずるがすごい!に関しては「久々の」「せっかくの」にピッタリの素晴らしいライブだったということは間違いなく、しずるを昔からきちんと追いかけている方々に羨望の念を抱いたくらいだ。しずるは追いかけ甲斐・分析甲斐・分析までしなくても色々な感情を抱き甲斐・・・と色々な「し甲斐」のある、そんできっと二人とも色々な意味での甲斐性のあるコンビなのである。私はしずるを目にした瞬間からずっと嫌いではなかったがずっときちんと観ていたわけでもなかった。この事実に対し後悔とまでは言わないがなんらかのモヤモヤする気持ちは生まれる。
そう、私は「今、しずるが面白い」と全力で思っている。なぜ、今なのか。このライブに来て少々わかったことをどこまでちゃんと書けるか、いざ勝負。
なんて気持ちで書き始めたらもう正確な文字数を言うのも嫌なくらいの分量になってしまった。このしずるに対する筆圧を含めてライブの感想であるのできちんと読んでもらうというより飛ばし読みをしながら「まだ終わらないのか」くらいの心持ちでこの文章に触れていただけると幸いなのである、と言い訳めいた始まりをさせていただく。



どのしずるもすごかった

〇〇がすごいは何回か行われているライブ。SLASH-PILE*1主催。過去実績として○○に入るのがニューヨーク・インポッシブル等。ゲストの芸人がメインの芸人のネタで一番好きなものを提示。それをメインの芸人が披露。それについてのトークという流れ。

「このしずるがすごい!」でも(多分他の回と同じく)5名の錚々たるゲスト陣(後述)
その5人が選んだ珠玉の5本。最近やっとしずるに注目している私でも4本見たことがあり、1本は知らなかった。ファン向けマニアックというより、代表作になりうる共感を生みやすいネタを中心に構成されたライブだったかもしれない。知らなかった1本に関しては生粋のファンの方からの「あのネタね!」の声には出さないがはっきりと期待を孕んだ感情が生み出した空気が心地よかったくらい。

ああ注目しなくても目に入ってくる存在であり続けているのだなという感慨と
このネタで「ああ」となる昔からのファンの方がうらやましいという感覚と

この記事でも書いたがしずるはいつまでも現役でいるし、もう少し言葉を補足するのであれば売れているといわれていた時期でも少し落ち着いた(売れていないとは言えないと思うが、ルミネキャパ450席超が単独ライブで即完というわけでもないというなんとも絶妙な立ち位置だと思う)今でも高品質のネタを作り続けているというところ。これが現役たるゆえんだ。芸人でもない私がこんなことを言うのもおこがましいが忙しさも暇もネタを作らなくなる理由になり得る。しずるはその「理由」に目もくれないコンビだということになる。
国民の多くがしずるを目にするきっかけとなった番組は日テレ・フジテレビ系列のお笑い番組であったかもしれないが、私はやはりTBS系列のキングオブコントで「現役感」を少しずつ確実に堪能することになった。そして年々彼らに対する注目度が高まっていく自分に明確な言葉で理由付けしてくれたのがこのライブ。大きなキーワードは2つ。

1.多彩にして多才
しずるは二人ともネタを作る上
池田:シリアス・村上:ほのぼの
池田:銃・村上:青春
池田:バカバカしさ・村上:哲学
(塚本曰く)池田:洋画・村上:邦画
等、対比が鮮やかな傾向がある。らしい。
対比は必ずしも固定ではなく、池田が「村上っぽい」ネタを、その逆で村上が「池田っぽい」ネタを生み出すこともあるという。二人のネタ作りはどちらかがネタの骨格となる「原案」を出し二人で少しずつ調整していくというスタイル。二人で一つながら、足りない才能を補うという感じではなく溢れる才能をうまいこと二人で増幅させている感がある。
さらに青春コントという強烈なイメージでTVお披露目を済ませた後、銃系シリアスコントというこれまた強烈なイメージへと、ごく自然な感じで移行がなされた。これからまた移行があるかもしれないと思わせるし別になくてもいいとも思わせる。多分これはイメージ戦略とかそういうセコイことではなく、ただ彼らの頭に浮かぶアイディアが常に流れ続ける水のように1か所に留まらないということなのだと思う。加えてしずるは「しずるっぽさ」という人前に立つ者が持っているべき「わかりやすいイメージ」という強烈な名刺をきちんと保持しつつ、その武器であるはずの「しずるっぽさ」さえも根底から覆すようなコントも量産する。それら質も驚くほど高い(かつ強烈なバカバカしさを伴うことも多い)。
大袈裟で語弊があるかもしれないが、彩りと才能を感じずにはいられないのである。
村上が「池田が作りそうなネタは池田に任せている」とこのライブ中に発していた。本来村上も原案を出せるし出した実績のある、シリアスで銃が出てきてバカバカしくて洋画を思わせるような作品は「池田が作るから」と手放すとのこと。ただその気遣い?制限?は、そのうちどうでもいいものになるのではないかと思う。才能溢れる人物に妙な束縛は似合わない。現にこのライブで披露した、コインらんどりー。シリアスでバカバカしく、妙に哲学的な一面もあり、洋画っぽい気怠さと邦画っぽいメッセージがあったように見えた。

2.キングオブコント2016準決勝
キングオブコントがはじまったのが2008年。しずるが決勝に進出したのが第2回大会の2009年。ここ数年で特に気になっているというのはいささか遅くはないか?とは私の自問自答。ただこの日のゲストが明確な言葉にしてくれたお陰で問いにピリオドが打たれた*2


しずるのキングオブコント2016準決勝の「突入」*3
俺はあれを見ていて、壮大な森の朝を見ているような気分だった。
俺ら次の次に出なきゃいけないのに半分は自分たちのネタに半分はしずるのネタをずっと見ていたい・自分たちなんかどうでもいいという意識があった。
笑いの天使が会場にたくさん舞い降りてきていた
数メートルしか離れていないのに25m離れた向こう岸でしずるがネタをやっているみたいだった



こんなことを天才コント師(後述)に言わせしめるくらい、2016年キングオブコント準決勝のしずるは特別な存在だった。2016/9/8*4に赤坂ブリッツにいた観客・スタッフ・芸人含めた1000人前後*5しか味わえていないし、もう振り返ることもできないのだが、しずるはあの日奇跡のようなネタをした。台本や演技がイイのは当然なのだが、ライブならではの醍醐味「その場にいる人全員で作り上げる一体感」が完璧すぎるほど完璧だった。深い森・笑いの天使・向こう岸・・・等の表現はこれを用いた芸人の高い表現力がなせる技である上にいささかオーバーに感じさせるかもしれないがあの様を描写するのにピッタリの表現のようにも思う。よっぽどしずるのネタが肌に合わなければ別だがあの日に同じ場所で同じような感覚を得た者は多かったのではないだろうか。ただ私のようにあの日を境にしずるに注目せざるを得なくなったかどうかはまた別の話だがこういった人間もまた少なくはないように思う。

このネタは2016年キングオブコント決勝でTV放映されたのだが、準決勝とはまるで別物という感覚を受けた。しずるの調子が悪かったわけではない。赤坂ブリッツと同じ敷地内にあるTBSテレビのスタジオ内ではあの一体感が再現できなかったというだけの話だし、その一体感は意図的に生み出せるものではないからだ。


多彩と多才/2016年キングオブコント準決勝、が大きなキーワードではあるがまだまだしずるへの感覚の説明が完結したわけではない。なので各々のゲストが選んだネタとトークの話を続ける。


以下豪華ゲストやその詳細


池田:洋画・村上:邦画

部屋(池田原案)by ラブレターズ 塚本直毅
まず、ゲストのフルネーム・コンビ(トリオ)名がプロジェクターに映し出されるのだが、そう言えば昔からのファンへの配慮か、ネタがはじまるまでなんのネタか確定出来ないようにタイトルを少しぼかした表現にしていた。プロジェクターに映し出されたタイトルは「部屋」
「なんで呼んだの?」のタイトルでお馴染みかもしれない。友人(池田)を呼び出しておいて一人漫画に読みふける村上。そこで違和感を訴える池田に対して・・・というネタ。
塚本曰く「せまーーいあるあるをよくついてくる」確かにあるあるではあるが誰も題材にしようと思わない、インパクト小さ目なシチュエーションが見事ネタに昇華しているとベタ褒め。池田:洋画 村上:邦画の名言はここで生まれる。
このネタの原案を出した池田は家に来て池田と言葉もかわさずに普通に風呂に入り寝て帰っていく田所を見て思いついたのだと言う。塚本は自分と三福エンターテイメントを思い起こす。塚本が相方の溜池に「しずるさんみたいなネタをやろう」と定期的に言っているとは驚き。

コントも人(にん)・哲学的=村上

洋服屋(村上原案)by ジャングルポケット 太田博久
これは初見ネタ。ただ関係者(ファン含め)間では問題作として認知されているご様子。「これほんとにTシャツですか?」で検索すると動画も出てくる。エリ首・裾・袖口のみのゴムバンドを身に着けた池田に対して店員村上がその「Tシャツ」の良さを語る。
太田は池田の受けの芝居~ズレの村上にツッコミを入れることも正すこともなく「これTシャツですか?」を繰り返すのみ~を絶賛していた。その顔芸もさることながらあるシーンで意味を持たせるために(下手をしたら観客が気付かないかもしれないのに)瞬きを一切しないという池田のこだわりもさすが。
このバカバカしく客を食ったかのようなネタを結成初期の頃に作っておきながら、大衆受けしやすい青春コントで世に出たという点でも太田はしずるに賞賛を浴びせかけ続けていた。しずる本人達にそんな気はないのだろうが「俺たちはこういうの(Tシャツ)も出来るがあなたたちはこういうの(青春コント)が好きなんでしょ。」というなんとも天才が考えそうな計算と裏を感じるのだと。
加えて太田はクレージーな村上に池田が翻弄されるネタが好みだとも言っていた。曰く「コントにも染み出す人(にん)」。漫才では人(にん)≒本来の人となり、が重要だしこれが反映されたネタは素晴らしいというのは昨今ある程度常識として認知されているがやはりコントもそうだというのが太田の言。露出しているキャラでは池田=クレージーのイメージが強いが風の噂で聞く村上の酒癖の悪さや天然ボケっぷりが身近な人間にこういうことを言わせるのであろう。
バカバカしさから池田の作ったネタかと思っていた太田。村上作だと聞いて驚いていたがそこですかさず池田が「これをTシャツと言い切るのは哲学。哲学的なのはやっぱり村上なんだよ。」と説明。さすがコンビ。互いをよく理解している。

空気張り詰め系・しずるの運と才能 ・(池田父による)お前らのネタって最初緊張すんだよ

殺し屋(村上原案)by ライス 関町知弘*6
こちらキングオブコント2009決勝の1本目で披露された「冥土の土産」あれ?冥途とどっちだと迷う気持ちもないでもないがまあ冥土とする。
関町曰くこれと「突入」が空気張り詰め系。これはしずるにしかできない。緊張と緩和と言ってしまえば(エンディングでも誰かが言ってたが)「そんなのコントはみんなそうじゃん!」・・・ん…待てよ…いやちょっと違う…とここは関町の肩を少し持つ立場でいたい。しずるは張り詰める空気がちょっと尋常ではない。どう言えばうまく伝わるのだろう、あの半端ねえ緊張。ここまで張り詰めといてすっと緩和するんかい?!とこちらをやや不安にさせる。で、急降下ながらごく自然に緩和する。単独ライブに顔を出す池田の父親が「お前らのネタ最初緊張すんだよ」という名言を残したのもわかる気がする。 
さらにここからMC田所も加わってライスとしずる、同期ならではの視点の話。
2006-2007年前後でしずるは謹慎*7を命じられライブのランクが降格。本来3-4分ネタをやるランクにいるはずだが降格して1分ネタを量産せざるを得なかったらしい。その頃に爆笑レッドカーペット(という1分ネタブームに火をつけた番組)がスタート。しずるは持っている、運があるという話へ。さらにその流れで爆笑レッドシアター(という内村光良がMCで若手コント師を中心に構成された人気番組)のレギュラーで多忙を極めたしずる。その中でこの「冥土の土産」をきちんと生み出した。本来なら1分ネタ・ショートネタだけを量産していればいい時期、その多忙にかまけてネタができなくなる時期なのではないかという考えはネタを作ったことのない私にも十分理解できる。いわば「普通ならば」の考え方だ。ただきちんと尺とストーリーのあるネタを作り続けたしずる*8.。これは立派な才能である。運と才能。しずるがこの世で認められないわけがない。露出も高く生み出すネタの質も高かったしずるに「今だからやっと言えるが悔しくて仕方なかった」と言葉に出来るライスもとても魅力的だ。
キングオブコント2009決勝の前日に銭湯に行った池田と田所。しずるの決勝進出を素直に喜べないどころか悔しくてたまらない田所はこっそり池田のすね毛の一部だけを剃刀で剃ったそうな。1本目がこの冥土の土産、2本目が短パンで足を丸出しにするネタ(卓球)だと知ってわざとやったと自白していた。魅力的と言ったのを早々に撤回したいのと素直で無邪気なやり取りににやけてしまうのと。まあこれが微笑ましい同期のエピソードというやつなのかもしれない。顔芸を最初は嫌がっていた池田がこのネタにより顔芸に覚醒。デコ皺は顔芸の勲章だという話もあった。

両方やりてぇ・ぶん投げている・コンビの代表作 ・命名基準

喧嘩(池田原案)by うしろシティ 金子学
いかにも喧嘩の強そうなチンピラ風情の池田と、いかにも喧嘩をしたことがなさそうな弱弱しい学生風情の村上が道端ですれ違い肩をぶつけるところから物語が展開される。見た目とは裏腹に喧嘩を売り続ける村上とそれをなんとかかわす池田というネタ。
ネタ披露後の第一声。「いやこれやりてえ。(どっちの役?と聞かれて)両方やりてぇ」と金子。コント師が優れたコント師に言われて嬉しくない言葉のはずがない。

さらにここからが、演劇的な話になり非常に面白くなる。
私自身、ラジオを聴いたり単独ライブに足を運ぶ程度にはうしろシティのファンなのではあるが、その実、この金子という男が何を考えてネタを作っているのか1ミリもわからない。ただこのライブではそれに少しだけ触れることが出来た。これもこのライブへの満足度を高めている大きな要因なのかもしれない。ましてやうしろシティ、最近*9全国ネットで放映されたENGEIグランドスラムでやっと全国に認知されたとラジオで話していた。正確には料理人として近年認知度が高まっている阿諏訪のいるコンビのネタがきちんと面白かったという認知をつい最近されたといったところか。キングオブコントの決勝に3回出場しているにも関わらずである。お笑いファンにとってM-1・キングオブコント等の賞レースは一大祭典のはずであるが一般認知度はまだまだ、とうすうすわかっていたことをまざまざと見せつけられた気がして私までショックを受けた。

話を元に戻す。

金子はこのネタを「気を抜いて見られるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」「ただこのネタはぶん投げている」と表していた。言葉足らずに感じるがほぼこの言葉「だけ」でネタの評をはじめたしほぼ説明もなく終えた。
役柄の日常や舞台を降りたときの背景を作り込む、というようなやりとりをここ最近お笑いに関する議論中でしょっちゅう耳にする。いや私が気付かなかっただけで昔から色々なところで話されていたのかもしれない。私がほんの少し演劇をやっていた時に一番衝撃を受けたし一番理にかなった役との向き合い方だなと思ったゆえ、こんなに普通にさらっと会話の中に出てくるのに少しひっかかりがある。もったいぶれと言っているわけではなく、「役作り」という経験したことのないものが簡単に大きな誤解をしてしまう過程を想起させるようなエピソードを大して説明もなく話してしまうことに若干の恐怖があるのだ。
なぜ舞台外の背景まで描くか。私は舞台上での挙動の「必然性」のためだと思っている。役柄に向き合えば向き合うほど出来なくなる(もっと言うとその役柄が選択するはずのない)挙動が増える。逆を言えば、このセリフはこの音でこのタイミングでこのボリュームで発するべきというような必然性が生まれたりもする。
そうなると丁寧で見やすくなる。
なぜ、それを、今、この言い方で?というちょっとした「違和感」が限りなく0に近くなるからだ。違和感は思考を止める。物語に没頭出来なくなる。だとしたら観客の思考を止めず物語に没頭させるために違和感を排除する作業は必然となる。ただこの排除作業、非常に地味だし時間もかかる。地味で時間のかかる作業を「丁寧に」経た作品はきちんと「気を抜いて」見れる作品になる。
繰り返すが金子は「気を抜いて見れるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」「ただこのネタはぶん投げている」とだけ言って話をどんどん進めていった。ややもしたら誤解が生まれそうな表現で、ただ彼の中では当然のことのように。
とにかくこのネタの池田にはバックボーンが全く見えない。村上が出てきて物語が始まるがこの前後で何をしているかはわからない*10、という話なのだが金子のターンが他4人のターンと比較して若干異質だったのはこのやり取りに代表されるように、終始続いた金子のコント観や彼の天才性が溢れ出て仕方なかったからである。天才は溢れ出てしまうものである。だからこそ言葉足らずにもなるということを金子を通じて実感せざるを得なかった。


続いて衣装の話。ぼんやりとしたイメージだけで正解がないまま店に行き、正解がないので何を購入すればいいのかわからないのにこれだけは「違う」というのだけわかると金子は言い、池田もそれに大きく賛同していた。特に「ダサい」を欲している際、古着屋に足を運ぶが店員に「何をお探しでしょうか」と言われて口をつぐんでしまうのは2組に共通するあるあるらしい。「ダサそうな店」と思って入店していることなど店員に言えるはずもない。
しずる池田演じる「赤いボーリングシャツを着た男」・うしろシティ金子演じる「帽子とサングラスを身に付けたおっさん」キャラも「様々なコントによく出現する同一人物キャラなのでは?」という取り沙汰され、前者は出没する州が、後者は出身の県が違う別人で決して同じにはして欲しくはないのだそう。
ところで関町が冥土の土産・突入を「張り詰め系」で同系統と称したように、金子は能力者・シナリオ通りを「コンビの代表作となりうる*11」で同系統と称していた。私はこの4本を「シリアス系」でひとくくりにしていたが、関町と金子の区分もわかるような気がする。前者は緊張と緩和の急激な差で笑いを取るネタ、後者は発想とストーリー展開に目をつけるべきネタ・・・ばっちりと正解ではないだろうがこんなところではないか。驚くべきは、村上:冥土の土産・能力者/池田:突入・シナリオ通り というネタ原案の内訳。才能がどちらに偏っているわけでもない。まさに奇跡のコンビである。
しずるの二人が次のネタの準備でハケた後も興味深い話は続く。MCの田所が金子に「登場人物の命名」について質問をしたのだ。曰く、「関係性が同等すなわち普段と近ければ金子と阿諏訪、関係性が変わった際もより普段と近い方が本名のままで片方の名前を変える。よほど外れる場合のみ両方の名前を変える」が基本だそうだ。加えて「うしろシティのネタは名前オチが多い。お茶村ピー介なり春そよ風木漏れ日なり。そういう名前オチを期待させないよう、ミスリードしないよう、名前オチではないネタは早めにキャラの名前を出すようにしている」と。
金子は風貌や話し方の雰囲気からその気配をほとんど感じさせないが非常に緻密にコントを作っている。
うしろシティとしずるは緻密さや繊細さの点で近い力量でネタを作っているし、両組ともたまにそれを大きく外すかのように「バカバカしさ」も惜しみなく披露する。お笑いの醍醐味だ。しずるは緊張と緩和に、うしろシティはファンタジーの中に潜む日常へのニヒルな視線に、それぞれベクトルを広げているが根本は同じなのかもしれない。いつか対決もしっかりとした共演も見てみたい2組である。

そこはかとなくおしゃれ・森・しずるはお手本

喫茶店(池田原案)by かもめんたる 岩崎う大
「企み」?「腹黒い」?等で認知されているネタだろうか。友人が互いに喫茶店で会話を繰り広げるのだが、金に汚い池田・女に汚い村上が自分の利のために相手を陥れるというネタ。腹黒い挙動の後に二人して常に同じ「悪い顔」をするのがこのネタのポイント。
独自かつ皆が納得しやすいコント観や理論を持ち合わせる岩崎が選ぶネタに緊張感を伴う期待があったが、意外にもこの一見シンプルなネタが選ばれた。私も多分会場にいる人も、そして出演していた芸人もこのネタではなくもう少し構成や発想が複雑なネタが選ばれるのではと思っていたのではないだろうか。
岩崎はネタ中何度もする表情にバリエーションを持たせることも出来るはずだしそれをしてしまいがちだが「同じ顔」とするところにしずるなりのそこはかとないおしゃれさを感じる。これがしずるだと言いたかった、と話した。
先述の「2016年キングオブコント準決勝のしずる」を「深い森」やら何やらに例えたポエティックな表現は岩崎によるものである。当然のように高い表現力、分析力とそこから生まれる説得力、賞レースの実績やら生み出す作品の質の高さから岩崎がするコントに対する言葉は的確で荘厳なものになる傾向にあるし、彼のいるトークライブは深い満足感が伴う。
そしてふいに「しずるはお手本」というような言葉を放つ。金子の「気を抜いて見れるネタってあるじゃん」「丁寧に作ってあるとさ」を思い出した。ややもしたら(「きっちりしすぎてつまらない」というような)誤解を生みかねないし、いかんせん天才は言葉を省く、という共通点からである。岩崎は金子とは違ってその後丁寧に説明をしてくれた。外国人モデルが何を着ても似合うように、しずるが演じれば大抵のネタが「見られる」モノになるという意味での「お手本」らしい。 これもコント師が優れたコント師に言われて嬉しくないはずがない言葉であると思う。
私はこのトークのヒントになるような経験をしたことがある。数年前にルミネで開催された「天竺鼠×しずる」のライブに於いてである。お互いが持ちネタを披露したりネタを交換したりという主旨の2マンライブ。天竺鼠が演じるとあり得ない不条理の天丼で笑いがこみあげてくるネタなのだがしずるが演じると日常の中にあり得るズレのように感じさせられたのだ。天竺鼠の台本も演技も悪いわけではない。むしろイイ。ただしずるが演じるとスパイスのような風味のような、いずれにせよプラスのものが確実に上乗せされる。そしてなんとなく説得力も増す。
本気でダメな台本と本気でダメな演技のコントをしずるが演じ直すところを見てみたいと思ってしまった。
岩崎は太田とは逆に池田が強烈にボケて村上が訂正していく形がベストと言っていた。村上がボケたりズレたりすると笑えないサイコになる、とのこと。
きっとどちらも本当でどちらもアリなんだろう。ここでも多彩なしずるを感じた。さらに岩崎は全く押し付けがましくないアドバイスでしずるの今後を示していた。自分達を信じてもっと突き抜けて良いというような内容だったのだが、同じ立場のしかも自分達を脅かす存在になりうる可能性のあるコント師にそれを伝えられる岩崎も底はかとなく魅力的だった。



最後に

ここまでのボリュームで書くと誰も細かく最後まで読むまいという安心感から逆にあれもこれも書けた。書くことによる「読ませない」である。
文中で触れなかったが、MC田所がそれぞれのゲストに選んだネタは参考程度に「どちらが作るネタがより好みか」という質問をしていた。村上弄りというノリも入ったので結果自体はどうでもいいのだが、結果を聞くまで真剣に相方に勝ちたい、自分が選ばれたいという姿勢を見せる二人にますます興味と好感が高まった夜。今思い出してもなかなかに楽しい。

このしずるがすごい!
日時:2018/4/11(水) 19:30~ 130分 場所:小劇場B1(下北沢)
料金:前売:2700円  当日:(多分前売金額と同じ)

*1:お笑い中心のキャスティング団体。K-PROと同種の団体と考えてよさそう。ゲスト芸人の傾向からなんとなくお金があるように感じる。株式会社だしね

*2:色々なところで話されているエピソードなのかもしれないなとちょっと思った

*3:ちなみに「このしずるがすごい!」当日にこのネタを披露していない。

*4:準決勝が2日間あるうちのしずるが出場した当日

*5:キャパと合わせて本当に大体の数字

*6:プロジェクター表記が智弘だった。相方でありMCの田所曰く「関町は本当に名前をよく間違えられる」と

*7:度重なる遅刻により2回ほどという話を聞いたことがある

*8:レッドシアターのレギュラーメンバーの中で、ジャルジャル・ロッチ、あとしいて言うなら柳原加奈子も「ネタ」を作り続けている芸人に私には見えている

*9:2018年4月7日(土)

*10:原チャリに乗っているらしい

*11:うしろシティでいう「転校生」・ライスでいう「バナナ」。ライスの代表作を「バナナ」としたのは金子なりのちょっとしたボケ。「監禁(くれぃ)」でいいだろう、ライスの代表作は